観光客が鹿児島弁の日常会話に触れた際、最も混同しやすいのが「おじゃったもんせ」と「おやっとさあ」の区別です。どちらも街中のポスターや焼酎の銘柄などで頻繁に見かける言葉ですが、使用する場面と相手に対するアプローチは全く異なります。
「おやっとさあ」は、漢字で書けば「お疲れ様(御労れ様)」。一日の労働を終えた同僚や、夕暮れ時に帰宅した家族、あるいは日々の暮らしの中で汗を流す人々に対して「今日もお疲れ様でした」「ご苦労様でした」と互いの労苦を分かち合う言葉です。一方の「おじゃったもんせ」は、外からやって来た人に対する「迎合・歓迎」の言葉であり、迎える側から招かれる側への一方通行のベクトルのもとに発せられます。
旅先やビジネスの現場で恥をかかないために、主要な薩摩方言の挨拶表現の違いを以下の比較データに整理しました。
このように並べると、それぞれの役割の違いが一目瞭然です。ホテルにチェックインした際に支配人から「おじゃったもんせ」と迎えられたのに対し、勘違いして「おやっとさあ!」と返してしまうと、相手に「お疲れ様です」と声をかけていることになり、文脈としてチグハグになってしまいます。言葉の立ち位置を把握しておくことが、円滑な対話の第一歩です。