インターネット上で散見される「滋賀のご当地グルメといえば鮒ずしだけで、駅前では滋賀らしいものが食べられない」という言説は、完全な事実誤認です。確かに鮒ずしは伝統的な発酵食として名高いものの、現在の大津駅前で展開されている滋賀琵琶湖ご当地グルメは、はるかに親しみやすく進化を遂げています。
代表的な例が、琵琶湖固有種である「ホンモロコ」の素焼きや、稚鮎(氷魚)の天ぷらです。大津港を間近に控える地理的利点を活かし、湖畔の漁師から直接買い付けるルートを持つ駅前割烹では、泥臭さが一切ない淡泊で繊細な白身の旨味をダイレクトに提供しています。これらは春先のわずかな時期しか味わえない希少品とされてきましたが、保冷・配送技術の進歩により、安定した品質で提供する店舗が増加しました。
さらに、大津はかつて東海道五十三次最大の宿場町として栄えた歴史から、独自のうどん・蕎麦文化や茶菓子文化を継承しています。出汁に地元産の上質昆布と削り節を贅沢に使った和食の基盤があるため、派手な看板を掲げない大衆食堂であっても、出汁の輪郭が驚くほど明確です。メディアの画一的な情報だけを頼りに京都駅周辺の混雑に並ぶ旅行者にとって、大津駅前の食環境はまさに「知る人ぞ知る盲点」となっています。