伝統的なフランス菓子の文脈において、フランス産栗の重厚な風味は欠かせない。とりわけサバトン社の高品質なマロンペーストは、濃厚で力強い甘みと洋酒の芳醇な香りをもたらし、クラシカルな味わいを支える骨格として長年愛されてきた。
一方で、近年目覚ましい台頭を見せているのが「和栗スイーツ」の潮流だ。熊本の球磨栗や茨城の笠間栗など、産地ごとの個性を全面に押し出した品々が人気を博している。和栗ならではの上品な香りとほくほくとした繊細な甘みは、従来のペーストの概念を根底から塗り替えた。フランス伝統の濃厚なコクをとるか、和栗のみずみずしい滋味をとるか。パティシエの哲学が最も色濃く現れるポイントがここにある。