物語の軸となるのは、洗練された大人の男女が陥る狂おしいまでの情愛だ。古都・京都の静寂漂う老舗旅館や洗練された茶室の風情と、急成長を遂げるメガシティ・シンガポールの煌びやかな高層ホテル。一見すると対極にある二つの都市が、主人公たちの感情の波立ちを鮮やかにあぶり出す。
静寂の中で秘めやかに燃え上がる感情と、南国の熱気の中で暴かれる密かな欲望。単なる浮気や不倫の顛末を描くのではなく、社会的地位や富を手に入れた大人たちが、なぜこれほどまでに他者の身体と心に溺れていくのか。その心理的機微が、息をのむような濃密なタッチで描写されている。愛と憎しみ、所有欲と絶望が裏腹に絡み合う筋書きは、まさに息つく暇もない刺激に満ちている。