大涌谷名物といえば、食べるだけで「寿命が7年延びる」と語り継がれる黒たまごだ。連日長蛇の列ができる大涌谷黒たまご館の周辺では、漆黒の殻を割りながら熱々の卵を口にする旅行客の笑顔が弾けている。だが、なぜ普通の生卵がこれほどまでに真っ黒に変色するのだろうか。
そのカラクリは実に興味深い火山地質学の現象によるものだ。約80度の温泉池で生卵をじっくり茹で上げる際、温泉成分に含まれる硫化水素と鉄分が反応し、硫化鉄という黒い化合物が殻の表面に固着する。さらにそれを蒸し釜で蒸し上げることで、旨味成分がギュッと凝縮される。延命伝説の真偽はともかく、化学的プロセスと地球のエネルギーが作り出したこの奇跡の味覚は、まさに現地でしか体験できない極上の味覚体験だ。