専門店の厨房で何日も煮込まれるデミグラスの深い余韻。それを、冷蔵庫にある定番調味料だけで再現する方程式が存在する。味の土台を構築する「黄金比」は、トマトケチャップ大さじ3に対し、ウスターソース大さじ2、赤ワイン(または酒)大さじ2、有塩バター10グラム、そして隠し味の醤油小さじ半分だ。
鍵を握るのは酸味のコントロールである。ケチャップに含まれる酢酸は、火を入れる前の段階では刺激が強すぎる。これを肉汁の残るフライパンで強めの弱火にかけ、赤ワインのアルコールとともに揮発させることで、角の取れた濃密な果実味へと変化する。仕上げに冷たいバターを投入し、火を止めてフライパンをゆすりながら余熱で溶かし込む「モンテ」と呼ばれる技法を用いることで、ソースに滑らかなとろみと艶、そして重厚なコクが生まれる。