2000年代初頭、デビュー曲『もらい泣き』で鮮烈なインパクトを残した一青窈。その類まれなオリジナリティと土着的な叙情詩にいち早く着目したのが、小林武史だった。小林はMr.ChildrenやMy Little Loverを国民的バンドへと押し上げ、数々の映画音楽を手がけてきた名匠である。
二人の距離を急接近させたのは、表現者としての深いリスペクトだった。2004年に一青窈が主演を務めたホウ・シャオシェン監督の映画『珈琲時光』の時代、彼女は表現者として極めて重要な転換期を迎えていた。平成を代表する不朽の名曲『ハナミズキ』をはじめ、彼女の持つ独特の言葉選びとエモーショナルな歌声に、小林の緻密で壮大なオーケストレーションやポップセンスが融合。二人の共同作業は、商業音楽の枠組みを超えた芸術的な高みへと昇華していった。