巴の悲劇的な死は、明治の世にさらなる地獄をもたらすことになります。その元凶となったのが、実の弟である雪代縁(ゆきしろ えにし)です。
幼少期から母代わりに自分を育ててくれた巴を病的なまでに盲愛していた縁は、姉が抜刀斎の刀で斬殺される瞬間を物陰から目撃してしまいました。現場の真意や巴の愛情を知らない縁の目には、「最愛の姉が悪辣な人斬りに惨殺された」としか映らず、その極度のショックから彼の黒髪は一晩で真っ白に変色しました。
狂気じみた復讐心に憑りつかれた縁は上海へと渡り、裏社会の頂点へ登り詰めた後、明治の日本へ帰還。剣心への「人誅(人間が下す裁き)」として、神谷薫をはじめとする剣心の大切な仲間たちをターゲットにした私刑劇を繰り広げることになります。巴の死は、一組の男女の悲哀にとどまらず、十数年の時を超えて東京を戦火に巻き込む巨大な復讐劇の引き金となったのです。