カナダ国旗を観察した際、多くの人が抱く疑問が「中央のカエデの葉にある角(尖った頂点)の数」です。葉の形状を数えると、先端の角は合計で11個存在します。インターネット上や一部の旅行ガイドブックなどでは「カナダの10州と1つの連邦政府(または北部3準州を合わせた連邦領)を表している」という説が散見されますが、これは明確な歴史的誤解です。
カナダ文化遺産省(Department of Canadian Heritage)の公的記録によると、11の頂点に政治的な区画や州の数を表す意味は一切付与されていません。この形状が選ばれた真の理由は、オタワの国立研究機関で行われた厳密な「風洞実験」にあります。
国旗デザインの選考当時、写実的な13個の角を持つサトウカエデの図案も検討されていました。しかし、強風で旗が激しくたなびいた際、角が多すぎると遠目からは葉の輪郭がぼやけ、単なる赤い丸や塊に見えてしまうという視認性の問題が浮上したのです。デザイナーと研究チームは人工的に強風を起こす風洞内で様々な図案をテストし、「最も激しく揺れても一目でカエデの葉と判別できる最小かつ最適な角の数」として導き出したのが、この11個の頂点でした。政治的な意図ではなく、極限まで機能美を突き詰めた科学的アプローチの結実といえます。