巨匠・横山大観の真相|なぜ富士山と朦朧体は今なお人々を魅了するのか

巨匠・横山大観の真相|なぜ富士山と朦朧体は今なお人々を魅了するのか

巨匠・横山大観の真相|なぜ富士山と朦朧体は今なお人々を魅了するのかを詳しくリサーチ! 知っておきたい 重要ポイントを凝縮して配信します。

横山大観をめぐる言説において、現代でもしばしば議論の的となるのが「戦時体制への協力と国粋主義」という側面です。大観は日中戦争から太平洋戦争期にかけて、自作の売上金をもとに軍用機(「大観号」と呼ばれる戦闘機)を何機も軍へ寄付した事実があります。そのため一部のネット論調や批評では「国家主義に阿った御用画家」というレッテルを貼られることがあります。

しかし、当時の社会構造や大観の思想的背景を冷静に分析すると、単純な政治的盲従とは異なる深層が見えてきます。水戸学の尊皇思想をルーツに持つ大観にとって、天皇や日本という国家は、自らの芸術の源泉である「日本の美と精神」そのものでした。大観は権力者にへつらって富を得ようとしたのではなく、むしろ「日本文化の尊厳を死守する」という過剰なまでの気概が、時代の濁流と結びついてしまったと捉えるのが、近代美術社会学の妥当な見解です。敗戦後も筆を折ることなく、GHQ支配下の荒廃した日本で再び静かに富士を描き続けた姿は、特定の体制を超えた純粋な自然信仰への回帰を示しています。

また、美術品流通の現場における重大な盲点が「偽物(贋作)リスクの極端な高さ」です。知名度と市場価値が極めて高い大観の作品は、戦前・戦後を通じて夥しい数の精巧な模倣品や贋作が作られてきました。遺族や関係者による「横山大観記念館」や「一般社団法人東京美術倶楽部」の鑑定証書がない作品は、骨董店やオークションでどれほど高額を提示されても慎重な見極めが必須です。「旧家の蔵から出た大観の掛け軸」といった話の大多数が模写や偽物である現実は、美術品収集において知っておくべき鉄則と言えます。

【プロの結論】横山大観の美学に向いている人・慎重になるべき人の判断基準

大観の作品やその精神世界に触れるにあたり、鑑賞者自身の嗜好や関心によって受け止め方は大きく分かれます。

▼大観の世界観に深く共鳴できる人(おすすめできる人)
・自然の移ろいや宇宙の循環といった、東洋的な精神世界・禅の思想に心惹かれる人
・細密な描写よりも、画面全体から立ち上る「空気感」「気迫」「スケール感」を味わいたい人
・西洋近代絵画の技術を取り入れながら、日本固有の美を再構築しようとした歴史的ドラマに関心がある人

▼鑑賞や収集に際して慎重になるべき人(おすすめできない人)
・分かりやすいポップさや、鮮明でシャープな輪郭線のアニメ的ビジュアルのみを好む人(朦朧体の滲みや余白が単なる「ぼやけた絵」に見えてしまうリスクがあります)
・客観的な鑑定証書の有無を確認せず、投機目的やステータス感覚だけで骨董品に手を出そうとする人

林 結菜
Author

林 結菜

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。