1959年1月14日、第3次日本南極地域観測隊のヘリコプターが昭和基地の上空に到達した。一面の白銀世界の中に、動く2つの黒い影。設営隊員の北村泰一と菊池徹が現地へと降り立ち、緊張に包まれながら近づいた。北村泰一が名を呼ぶと、耳を立て、静かに尾を振って駆け寄ってきたのは、まぎれもなくタロとジロだった。
北村泰一と菊池徹の手記には、公式報道の陰に隠された感動の裏側が記されている。駆け寄ってきた2頭は騒ぎ立てることもなく、静かに隊員たちの手に鼻を押し当て、まるで帰還を信じて待っていたかのような静穏な佇まいを見せたという。1年間の孤独な闘いを生き抜いた2頭との再会は、終戦からの復興期にあった日本社会に、計り知れない勇気と生きる希望を与えた。