本作が放つグロテスクさの根底には、捕食される側の無力感と痛烈なリアリズムがあります。物語の冒頭、主人公エレンの眼前で母親カルラが「ダイナ巨人」によって上半身を握りつぶされ、捕食されるシークエンスは、全編を通じても屈指のトラウマシーンとして語り継がれています。
多くの少年漫画であれば、間一髪で救出されるか、暗転して直接的な描写を避けるのが通例です。しかし諫山創氏は、骨が軋む音や肉体が裂ける瞬間、咀嚼される犠牲者の絶望的な表情を一切の躊躇なく紙面に焼き付けました。調査兵団の精鋭であったミケ分隊長が巨人群に四肢を引き裂かれながら泣き叫ぶ最期や、訓練兵団の仲間たちが次々と捕食されていく描写は、読者に「死の不可避性」を痛烈に突きつけます。
これらの捕食描写は単なる悪趣味なグロテスク表現ではなく、「人間が食物連鎖の頂点から最下層へ叩き落とされた世界」の絶対的な過酷さを読者に体感させるための必然的な演出手法でした。