この偉業を語る上で欠かせないのが、パイオニアたちの存在である。研究の第一線で指揮を執り、技術的基礎を打ち立てた熊井英水名誉教授の情熱なくして、完全養殖の実現はあり得なかった。研究室に寝泊まりしながら稚魚の挙動を観察し続けた日々が、不可能な壁を打ち破る力となった。
一方で、その革新的な研究成果を研究室のなかだけに留めず、社会課題の解決と事業化へと結びつけたのが有路昌彦教授である。学術的な成功を産業として成立させるため、生産から流通、直営店舗の展開に至るサプライチェーン全体を再設計。大学研究と市場をシームレスにつなぐビジネスモデルの構築は、日本のフードテックにおける金字塔となった。