ネット上の掲示板や格闘技談義で数十年にわたり繰り返されてきた「極真空手と伝統派空手、路上や何でもありの戦いならどっちが強いのか?」という議論。この問いに対する格闘理論的・実戦的な結論は、「どの交戦距離(レンジ)で衝突するか」によって180度覆るという事実である。
伝統派空手が誇る最大の脅威は、長距離から一瞬で懐に飛び込む「神速の踏み込みスピード」だ。遠い間合いからノーモーションで放たれる中段突きや上段ワンツーは、相手の視界の外から一撃で急所を貫く。総合格闘技(MMA)の世界において、伝統派空手出身の堀口恭司選手や元UFC王者リョート・マチダ選手が、独特のステップワークから相手を完封した実例がその証左である。路上などの喧嘩において、相手が格闘技の素人であれば、間合いに入った瞬間に一撃で意識を刈り取るポテンシャルを持つ。
しかし、一度接近戦(クリンチ寸前の至近距離)にもつれ込んだ場合、極真空手の制圧能力は圧倒的だ。極真の稽古は「相手の打撃を受け止めながら、至近距離からレバーや大腿部に致命的な打撃を叩き込む」ことを前提としている。日々の稽古で骨と筋肉が硬化し、痛覚への耐性を極限まで高めた極真の有段者は、少々の反撃を無視して相手を叩き潰す馬力を持つ。寸止めルールの実戦性がスピードと先制打撃にあるとすれば、極真の実戦性は接近戦における絶対的な破壊力と「タフネス」にある。