鶏肉のお弁当で最も警戒すべきは食中毒だ。厚生労働省と食品安全委員会の発表資料によると、カンピロバクターは鶏肉の生食や加熱不足で感染する代表的な食中毒菌であり、鶏肉の市販検体から高率で検出される。潜伏期間は1~7日と長く、少量の菌でも発症リスクがある。また、黄色ブドウ球菌は人の手や鼻咽頭に常在し、弁当のように調理後に手で触れる機会が多い食品で増殖しやすい。
鶏肉の中心部が75℃以上で1分間以上加熱されれば、カンピロバクターやサルモネラ菌は死滅する。しかし、問題はその後の取り扱いだ。菌は加熱後に食品へ付着する「二次汚染」と、常温放置による「菌の増殖」で再びリスクを高める。夏場の室温30℃では、黄色ブドウ球菌が約3時間で食中毒を起こすエンテロトキシンを産生するという実験データもある。
したがって、お弁当に鶏肉を入れる際の鉄則は次の通り。
前日仕込みの場合、必ず加熱後に粗熱をとり、冷蔵庫で保存する。常温でゆっくり冷ますのは菌を増やす行為に等しい。粗熱を取る際は、金属トレーや保冷剤を当てて急速に温度を下げるとよい。当日朝に再加熱を行い、中心部までしっかり熱を通した上で、完全に冷ましてから弁当箱に詰める。
再加熱の有無が分かれ目となる。「冷めても美味しい」とされるおかずでも、安全性の観点からは再加熱して詰めるのが推奨される。再加熱により菌が減少し、詰める時点での菌数を最小化できるからだ。ただし、再加熱後に熱いまま蓋をすると蒸気が水滴となり、その水分が菌の温床となる。必ず扇風機やうちわで冷まし、湯気が完全に消えてから蓋をする。