冷戦直後の混乱期、無防備に晒された巨獣たちを救うべく立ち上がったのが「シベリアトラ・プロジェクト」だった。極寒の現地に乗り込み、科学的根拠に基づいた本格的な追跡調査の土台を築いたパイオニアこそ、伝説的な野外生物学者ジョージ・シャラーである。彼の現場主義と妥協のない調査手法は、今日のトラ保護のバイブルとして今なお生き続けている。
シャラーらの泥臭いフィールドワークによって、一頭のトラが生き抜くために必要な行動圏の広さや、獲物となるシカやイノシシの適正な生息密度が明らかになった。彼が残した「野生動物を護ることは、彼らが生きる広大な生態系そのものを護ることだ」という哲学は、現代の若手研究者たちにも色濃く受け継がれている。