厨房の奥で巨大な羽釜と対峙するのは、店主の内田裕英氏だ。その眼光は鋭く、絶え間なく釜の泡立ちと立ち上る湯気を見つめている。彼が頑なに守り続けるのが、伝統の「呼び戻しスープ」と呼ばれる手法だ。
スープ釜の火を一切消すことなく、古いスープに新しい豚骨スープを継ぎ足し続けながら煮込み続ける。一見シンプルに見えて、温度管理や骨の砕き具合、継ぎ足すタイミングをわずかでも誤れば、全体のバランスが一気に崩れてしまう極めて繊細な作業だ。内田氏の熟練した勘と果てしない手間によって、臭みを完璧に抑え込みながらも、骨の髄から抽出された圧倒的な濃密さが生まれるのである。