宇多田ヒカルのキャリアを語る上で欠かせないのが、庵野秀明監督のアニメーションシリーズとの共闘である。『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のテーマソング「One Last Kiss」に結実した音像は、エレクトロニックとアコースティックの境界を溶かし、現代のJ-POPが到達し得る最高峰の芸術性を示した。
海外の先鋭的なプロデューサー陣とのコラボレーションを重ねながらも、中心にあるのは常に彼女自身の剥き出しの詩情と声の響きである。ロンドンでの生活で培われたフラットな視座と、複雑な人生経験を経て獲得した包容力。それらは今や、世界のオルタナティブ・ポップシーンとも共鳴する唯一無二の響きとなって鳴り響いている。