今回の目玉は、何と言っても海外の個人コレクターが半世紀以上にわたり密かに保管していた素描群の初公開だ。
完成された大作の前に、クリムトは気が遠くなるような数のクロッキーや素描を残した。鉛筆の一筋、炭のひと筋にまで込められた緊張感。キャンバスに向かう前の揺れ動く感情や、モデルとの濃密な対話の痕跡が、剥き出しのまま紙の上に刻まれている。特に1900年代初頭に描かれた女性の立ちポーズの素描は、エゴン・シーレにも通じる生々しい線描で、見る者を圧倒する。
「下絵を見れば、彼が単なる飾棚の装飾家ではなく、人間の本質を抉り出そうとした探求者であったことがよくわかる」。美術史家の言葉通り、素描展示室は、クリムトという人間の息遣いを最も身近に感じられる特別な空間となるだろう。