ヒロインのソフィー役に挑んだのは、日本映画界の至宝・倍賞千恵子だ。呪いによって18歳の少女から90歳の老婆へと姿を変えられてしまうソフィーの感情の揺らぎを、彼女はたった一人で演じ分けた。当初は年齢別に別のキャストを配する案も浮上していたが、宮崎監督は倍賞千恵子の持つ包容力と声の振幅にすべてを託した。
倍賞の演じるソフィーは、老いへの戸惑いから次第に力強さを獲得していく。声のトーンがシームレスに変化し、少女の可憐さと老婆の図々しさが同居する演技は圧巻の一言だった。木村拓哉演じるハウルとの掛け合いにおいても、母性と少女の心が交錯する独特の距離感を鮮やかに表現してみせた。