世間を驚かせたのは、被害者となった男性たちがなぜ次々と莫大な金を差し出し、命まで奪われるに至ったのかという点である。木嶋佳苗の手口は、巧妙な心理サスペンスのドラマを地で行くものであった。彼女は男性たちの孤独感や「包容力のある女性に癒やされたい」という欲求を的確に見抜き、巧みな心理操作を仕掛けた。
婚活詐欺の多くは短期的な欺瞞で終わるが、彼女の場合は違っていた。手料理を振る舞い、過剰なまでの気配りと優しさを見せることで、被害者に「自分を理解してくれる最高のパートナー」と信じ込ませた。相手の自己承認欲求を満たした上で、学費や身肉の生活費といった名目で巧みに金銭を要求する。男性側は一度依存状態に陥ると、異常な金額であっても疑問を抱かずに差し出し続けた。この緻密なマインドコントロールこそが、事件の最も恐ろしい側面である。