一方で、中国由来の「水母(スイボ/クラゲ)」という表記には、より生物学的(かつ怪異的)な視線が注がれている。『本草綱目』をはじめとする中国の古代博物志には、クラゲの体構造や利用法が細かく記録されていた。
中国の伝承では、クラゲは水そのものの精霊であり、濁った水から自然発生的に生まれる母体であると考えられていた時代がある。また、クラゲの傘の下に小さなカニやエビが潜り込む習性を観察した古代人が、「水母がエビを産み落としている」と解釈したことも大きい。命の源としての「水」と、すべての母としての「母」。科学的根拠はともかく、当時の人々にとってクラゲは、海の生命力を象徴する極めて根源的な存在だったのだ。