長年にわたる演劇界への多大な貢献が認められ、国民栄誉賞を受章した際も、彼女の態度はどこまでも謙虚であった。「私などがいただいてよいのでしょうか」という言葉の裏には、驕ることなく常に一表現者として高みを目指す姿勢が貫かれていた。その受章は、彼女個人への称賛であると同時に、長年地位向上を目指してきた舞台演劇業界全体に対するスポットライトでもあった。
晩年になっても「生涯現役」の看板を下ろすことはなかった。年齢という壁を理由に妥協することを拒み、声が出る限り、体が動く限り舞台に立ち続けようとした精神。その孤高の矜持は、演劇に人生のすべてを捧げた者だけが到達できる聖域だったと言える。