異形の怪力男スロースを演じたのは、元アメリカンフットボール選手という異色の経歴を持つジョン・マタザックだ。身長203センチ、体重120キロを超える圧巻の体躯を誇り、NFLのオークランド・レイダースでスーパーボウル制覇を達成した伝説的なディフェンシブエンドだった。
引退後に俳優へと転身した彼を待ち受けていたのは、過酷を極める撮影環境だった。顔面全体を覆う特殊メイクには、毎朝5時間以上もの時間が費やされた。さらに右目の位置を著しく下げた非対称なマスク構造のため、一方の目はリモートコントロールによる機械駆動(メカトロニクス)で遠隔操作されていたのだ。
マスク内部の温度は危険なレベルまで上昇し、汗が機械部分に入り込めば即座に故障や痛みを引き起こす。過剰な熱とプレッシャーに晒されながらも、彼は一言も泣き言を漏らさず、あの愛すべきスロースに命を吹き込み続けた。