我妻善逸という剣士を語る上で欠かせないのが、普段の情けない振る舞いと戦闘時の神速の居合との間に横たわる、あまりにも巨大なギャップだ。鬼の気配を感じれば真っ先に悲鳴を上げ、仲間の背中に隠れようとする姿は、およそ鬼殺隊士とは思えない。しかし、恐怖が限界を超え、意識を失って「眠り」に落ちた瞬間、空気は一変する。
背筋が伸び、吐息が雷光の音へと変わる。雷の呼吸・壱ノ型「霹靂一閃」で見せる一閃は、視聴者の息を飲ませるに十分なカタルシスをもたらす。さらに物語が進み、自らの弱さと過去の因縁に向き合った末に編み出した独自の技、雷の呼吸・漆ノ型「火雷神(ほのいかづちのかみ)」を解き放つシーンは、彼の成長の集大成だ。もはや気絶による逃避の覚醒ではなく、自らの意思と覚悟で雷の龍を纏い敵を討つその佇まいは、ファンを魅了してやまない最大の秘密と言える。