彼の芸の根底には、師匠である入船亭扇辰の徹底した美意識が流れている。扇辰の持つ端正な佇まい、登場人物の機微を鮮明に描き出す心理描写、そして無駄を極限まで削ぎ落としたセリフ運び。その薫陶を受け、古典落語という完成されたフォーマットに新たな息吹を注ぎ込んでいる。
長屋の八五郎のそそっかしさ、武士の凛とした矜持、路地裏に漂う庶民の哀愁。登場人物の誰もが嘘くさくなく、すぐ隣に生きているかのような錯覚を覚える。扇橋の高座には、過剰な現代風アレンジに頼らずとも、言葉の抑揚と確かな視線運びだけで情景を立ち上がらせる圧倒的な骨格がある。