作者である古壱の最大の強みは、登場人物一人ひとりに吹き込まれた凄まじい生々しさだ。過剰な説明台詞に頼ることなく、ふとした視線の動きや沈黙の間(ま)によって感情の機微を表現する。正義と邪悪という単純な二元論では到底括れない多面的なキャラクターたちが、物語に圧倒的な深みを与えている。
特に主役たる「妃」の描写は秀逸を極める。可憐でありながらどこか危険な香りを纏い、周囲の運命を狂わせていく姿は、観る者の倫理観を揺さぶる。古壱が描く「美」とは、単に見た目が美しいことではない。滅びゆく世界の縁で懸命に抗う、人間の泥臭い生への執着そのものが美として結晶化しているのだ。