大雨のたびにSNS上で「新横浜公園が水没して日産スタジアムが孤立している」「鶴見川が氾濫したのではないか」といった画像付きの投稿が拡散され、流域に動揺が走る現象が度々見られます。しかし、これは氾濫の被害現場ではなく、新横浜公園遊水地が本来の設計通りに命がけで機能している瞬間そのものです。
新横浜公園遊水地は、鶴見川の堤防の一部を低くした「越流堤(えつりゅうてい)」を備えており、本流の水位が危険な高さまで上昇した際に、濁流をあえて公園内へ意図的に引き込む構造を持っています。この遊水地の最大貯水容量は約390万立方メートルに達し、横浜スタジアム約3杯分もの洪水を一時的にプールすることが可能です。これにより、下流に位置する港北区綱島や鶴見区の広大な低地住宅街の破堤を防ぐ防波堤となっています。
日産スタジアム自体も、高床式の人工地盤の上にそびえ立つ構造になっており、1階ピロティや外周駐車場が水に浸かってもスタジアム本体の構造には何ら影響が出ないように設計されています。SNSで広まる水没写真は、鶴見川の治水システムが限界を迎えたシグナルではなく、本流の水位を押し下げるために計算され尽くした治水作戦が発動している証拠です。ただし、遊水地に水が流入し始めているということは、鶴見川水系全体が許容量の限界に近づきつつある緊迫したサインである点も見落としてはなりません。