読者が最も気になる疑問の核心は、「更迭は実質クビなのか」という点に尽きます。結論から言えば、そのポスト(閣僚や代表取締役など)に関しては完全にクビ(職権の喪失)ですが、組織人としての身分(国会議員や社員)まで剥奪されるかどうかは立場によって真逆の結果となります。
典型例として挙げられるのが大臣更迭の経緯です。国会審議の停滞を招く失言、政治資金パーティーをめぐる疑惑、あるいは省庁内の不祥事監督責任が生じた際、野党からの追及や内閣支持率の急落を避けるため、首相官邸は引責交代を決断します。このとき、首相が直接憲法68条の罷免権を行使して「クビ」を切ることは、政権の任命責任の重さを自ら認めることになり、党内対立を深めるリスクを伴います。そのため、官房長官や幹事長が水面下で対象大臣と接触し、「これ以上は庇いきれない。自ら身を引いてほしい」と辞表提出を迫るのが政治現場の常套手段です。
辞表が提出され首相がそれを受理する形を取るため、記録上は「辞任」ですが、実態は官邸による排除命令であり、マスコミはこれを「事実上の更迭」と一斉に報じます。大臣を更迭されても国会議員の身分を失うわけではないため、一般企業で言う「即時解雇」とは性質が大きく異なります。
気になる更迭後の処遇と退職金はどうなるのでしょうか。政治家の場合、閣僚を更迭されても在任期間に応じた期末手当(ボーナス)や議員報酬は保障されます。一方で民間企業の場合、取締役などの役員が更迭(実質解任)された際は、役員退職慰労金規程に基づき、不祥事の重度に応じて退職慰労金の不支給または減額が決議されるのが通例です。一般社員が不祥事で役職更迭(降格処分)された場合は、役職手当こそ消滅しますが、労働契約法により即座に解雇されることは極めて稀であり、基本給と退職金受給権は一定程度保護されます。