手をこまねいて見ているわけではない。新宿区の吉住健一区長は、歓楽街の治安と環境衛生の向上を最重要課題の一つに掲げ、官民連携による大規模な対策へと舵を切った。行政の号令のもと、歌舞伎町商店街振興組合と害獣・害虫駆除のプロ集団であるペストコントロール産業(害獣・害虫駆除業)がタッグを組み、前代未聞の徹底防除作戦を展開している。
作戦の理論的支柱を担うのは、ねずみ駆除専門家・医学博士の矢部辰男氏らをはじめとする生態学・衛生学の頭脳だ。矢部氏らは、単に毒餌を撒くだけの対症療法を厳しく戒める。ネズミの行動ルートを綿密に割り出し、餌場となるゴミ集積所の密閉管理、建物の侵入経路を物理的に遮断する防鼠施工、そして街路全体での一斉駆除を同時に行わなければ根絶は不可能だからだ。
公益社団法人日本ペストコントロール協会の技術指導を受けた専門業者たちが、人通りの途絶えた未明の歌舞伎町に集結。高機能なトラップの設置、生息密度の科学的モニタリング、特殊な遮断材を用いた隙間の封鎖作業を組織的に実行している。行政・地元商店街・専門駆除業者が三位一体となったこの包囲網こそが、都市の暗部で増殖した害獣に立ち向かう最新の防波堤となっている。