ネット上の旅行記やSNSでは「手軽に行けるインスタ映えスポット」として紹介されがちな伏見稲荷大社ですが、現地には事前に正しく知っておくべき文化的な背景と盲点が存在します。
その代表格が、奥社奉拝所の右奥にある「おもかる石(重軽石)」です。石灯籠の前で願い事を強く思い浮かべながら上の擬宝珠(空輪)を持ち上げ、「自分が予想していた重さより軽ければ願いが叶い、重ければ叶い難い」と試し占うものです。
ここで多くの参拝者が「重かったから願いは叶わない」と落胆して帰路につきますが、神職関係者の言説や神道的な解釈に基づけば、この判定は吉凶の確定診断ではありません。「重い」と感じた場合は、「成就には一層の精進と努力が必要である」という神仏からの激励の教えであり、行動を見直す契機と捉えるのが本来の作法です。
また、「境内にいるキツネは神様そのものである」というのもよくある誤解です。神社の狐は「白狐(びゃっこ)」と呼ばれ、目に見えない神仏の意志を人間に伝え、人間の願いを神に届ける神使(つかわしめ・お使い)です。口に鍵(霊徳や米蔵の鍵)や宝珠(霊力)、巻物(知恵)を咥えている姿に着目すると、それぞれが司るご神徳の違いが鮮明に見えてきます。
さらに千本鳥居の奉納には明確な規定があり、個人・法人を問わず申し込むことが可能です。初穂料は小型の5号サイズで約20万円台から、最も巨大な10号サイズでは130万円超に達します。現在も全国の企業経営者からの奉納希望が絶えず、希望する場所に建てるまでに数ヶ月から数年の順番待ちが発生するケースも珍しくありません。