高校化学における電子式の書き方には、再現性の高い明確なプロトコルが存在します。やみくもに点を打つのではなく、以下の4ステップを守るだけでミスは激減します。
- 対象の原子の元素記号を書く。
- 元素記号の上下左右の4か所に、価電子を「1個ずつ」順番に配置していく(フントの規則の初歩的応用)。
- 5個目以降の価電子がある場合は、すでに打った点とペア(対)になるように重ねて配置する。
- 不対電子(1個の点)同士を近づけて相手の原子と重ね合わせ、共有電子対を完成させる。
このルールを適用して、頻出代表格である「水(H₂O)」と「アンモニア(NH₃)」の成り立ちを比較検証してみます。
水分子の中心にある酸素原子は価電子が6個です。上下左右に1個ずつ配った後、2か所に2個目を配置するため、「非共有電子対が2組」と「不対電子が2個」という配置になります。この2個の不対電子に水素原子がそれぞれ結合するため、水分子全体で共有電子対は2組、非共有電子対は2組となります。
一方、アンモニアの窒素原子は価電子が5個です。同様に点を打つと、「非共有電子対が1組」と「不対電子が3個」生じます。3本の手に水素原子が結合するため、アンモニア分子全体で共有電子対は3組、非共有電子対は1組となります。
非共有電子対が決定づける「分子の形と結合角」の物理的理由
なぜ分子は一直線にならず、特有の立体構造を取るのでしょうか。その鍵を握っているのが、まさに非共有電子対です。電子はすべて負(マイナス)の電荷を帯びているため、電子対同士はお互いに反発し合います。この理論を化学では「原子価殻電子対反発則(VSEPR則)」と呼びます。
ここで決定的に重要なのが、「非共有電子対同士の反発力は、共有電子対の反発力よりも強い」という事実です。共有電子対は2つの正電荷(原子核)に引っ張られて細長く拘束されていますが、非共有電子対は1つの原子核にしか束縛されていないため、雲のように広く空間を占有します。
メタン(CH₄)は中心の炭素に共有電子対が4組あり、非共有電子対はゼロです。4本の結合が均等に反発し合う結果、正四面体構造を取り、結合角は理想的な109.5度になります。しかし、アンモニア(NH₃)では1組の非共有電子対が上から共有電子対を強く押し下げるため、結合角は107度(三角錐形)へと狭まります。さらに水(H₂O)では、強力な非共有電子対が2組もあるため、結合角は104.5度(折れ線形)まで縮められます。この結合角の減少トレンドは、試験で頻出の超重要因果関係です。