時計の針を1977年12月31日に戻そう。第28回NHK紅白歌合戦。華やかなお祭りムードの中、ステージに立ったちあきなおみは異様だった。乱れた髪、虚ろな目元、そして痙攣するかのような激しい身振り。それまでの歌謡曲の枠組みを完全に破壊するパフォーマンスだった。
歌唱後、司会者が「なんとも気持ちの悪い歌ですね」と漏らしたというエピソードは、今や伝説として語り継がれている。お茶の間は凍りつき、苦情の電話も殺到した。しかし、それこそが彼女の狙いであり、表現者としての妥協なき姿勢の現れだった。美しく歌うことだけが歌手の仕事ではない。彼女は歌の登場人物そのものになりきっていたのだ。