実業団の強豪として知られる旭化成柔道部は、大野将平という稀代の柔道家を長年支え続けてきた実家のような場所だ。現役時代の圧倒的な稽古量を支えたこの場所で、大野は若手選手たちとの合同合宿や個別指導を開始している。単に技のキレを伝授するのではなく、「なぜその組手なのか」「畳の上に立つ覚悟とは何か」を問いかける対話型の指導が特徴だ。
旭化成の若い選手たちにとって、大野の指導はまさに衝撃の連続だという。言葉一つひとつに重みがあり、実践を交えたアドバイスは一瞬で選手の課題を見抜く。自身が培ってきた「組んで投げる」本物の柔道を、いかにして次世代の若者たちに継承していくか。旭化成での指導活動は、大野が描く巨大な指導者構想の最初のアトリエであり、実験場でもあるのだ。