TBSテレビの看板番組として長年国民的な支持を集めた『渡る世間は鬼ばかり』。この作品で彼女が見せた演技は、多くの視聴者の脳裏に焼き付いている。脚本家・橋田壽賀子が紡ぎ出す膨大な台詞の応酬は、役者にとって極限の集中力を要する試練の場でもあった。息継ぎの間すら計算された長台詞を、単なる暗記ではなく生きた感情として観る者に届ける技術は並大抵のものではない。
家族の葛藤や人間関係の機微を容赦なく描くホームドラマの現場において、彼女は過剰な誇張を排した極めて自然なリアリズムを持ち込んだ。家族だからこそ生じる衝突やすれ違い、その奥にある愛情の屈折を、声のトーンや細やかな表情の変化で表現しきった実力は、共演したベテラン俳優陣からも一目置かれる存在だった。