渡辺徹のキャリアを語る上で欠かせないのが、本格派の劇団「文学座」での修行時代だ。若き日の彼が持っていた演技への純粋な情熱と誠実さは、演技の基礎を徹底的に叩き込む過酷な環境下で磨き上げられた。
転機が訪れたのは1981年。日本テレビ系の金曜8時枠で絶大な視聴率を誇っていた怪物番組、刑事ドラマ『太陽にほえろ!』への抜擢だった。彼が演じた新人刑事「ラガー」こと竹本淳二は、颯爽とした姿とフレッシュな魅力で瞬く間に全国の視聴者を虜にした。
当時の撮影現場は、主演の石原裕次郎をはじめとする大スターたちが居並ぶ緊張感あふれる空間だった。現場での渡辺徹は、走るシーンのあまりの過酷さに足の爪が剥がれても笑みを絶やさず、NGを出せば誰よりも深く頭を下げて食らいついたという。制作スタッフが明かす秘話によれば、過密日程のなかでも見せたその前向きな姿勢こそが、大先輩たちから愛され、ラガー刑事というキャラクターに命を吹き込んだ真の理由だった。