なぜ指導教員の口から「駒」という耳を疑うような言葉が出たのでしょうか。東北大学における「新しい駒を探してください」という発言の真相を探ると、研究室運営における構造的な病理が浮かび上がってきます。
当時、該当の研究室では国際的なトップジャーナルへの論文採択や大型競争的資金の獲得に向け、極めて過酷なスケジュールで研究プロジェクトが進められていました。教員側にとっては、自らの研究実績と研究室の評価を維持することが最優先事項となり、実験を担当する学生やポスドクを「共同研究者」ではなく「プロジェクト推進のための人的資源」とみなす歪んだ認識が常態化していたと指摘されています。
体調不良や精神的プレッシャーで離脱を申し出たメンバーに対して、労いやケアの言葉をかけるどころか、「抜けた穴を埋める新たな労働力(=駒)を早急に調達しろ」という指示を出したとされ、これが「新しい駒を探してください」という言葉の本質的な意味でした。教育機関としての倫理観を著しく欠いた成果主義の暴走が、この冷酷な発言を生み出した決定的な要因です。