街頭や公共の場で服を脱いだ場合、警察によって逮捕される理由の根拠となる法律は主に2つ存在します。それが刑法174条の「公然わいせつ罪」と、軽犯罪法1条20号です。両者の区分を正確に把握している一般人は極めて稀ですが、法的な帰結には天と地ほどの開きがあります。
まず、公然わいせつ罪の境界線を決定づける要素は「公然性」と「わいせつ性」の2点です。公然性とは、不特定または多数の人が認識し得る状態を指し、実際に目撃されたかどうかは問われません。「見られる可能性のある場所」で行為に及べば要件を満たします。そして、最高裁判所の判例上、性器を露出する行為は基本的に「人の性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」と解釈され、わいせつ物とみなされます。
一方、性器の直接的な露出を伴わない場合や、わいせつとまでは評価されない程度の露出(尻や胸の露出、一時的な奇行など)については、軽犯罪法違反の基準に照らされ、「公衆の目に触れるような場所で、公衆にけん悪の情を催させるような仕方で、しり、ももその他身体の一部をみだりに露出した」として扱われるケースが一般的です。この場合、前科がつく可能性のある刑法犯と異なり、拘留または科料という比較的軽微な処分にとどまる事例も見られます。
さらに見過ごせないのが、自宅での全裸の違法性をめぐる問題です。「自分の家の中だから何をしても勝手だ」という思い込みは、法解釈上極めて危険です。たとえ専有部分の部屋の中であっても、大通りの歩道から丸見えの状態のままカーテンを全開にして窓際に立ったり、共用廊下や近隣住宅から見通せるベランダに出たりした場合、外部から視認できる状態を故意に放置したと判断され、公然わいせつ罪や軽犯罪法違反、あるいは各自治体の迷惑防止条例違反で立件された前例が複数報告されています。