楽器選びにおいて、演奏性以上に重要でありながら初心者が最も軽視しがちなのが「自宅の防音環境」です。どれほど熱意があっても、周囲に気兼ねして弾けない環境では技術の上達は望めません。
アコギの生音は、約80dB〜90dBに達します。これは間近で聞く地下鉄の車内やパチンコ店の店内に匹敵する大音量です。一般的な日本の木造住宅や軽量鉄骨造のアパートでは、隣室に話し声すら筒抜けになることが多く、アコギをストロークで力強くかき鳴らせば、ほぼ確実に近隣トラブルの火種となります。
ネット上ではアコギ自宅練習の騒音対策として、サウンドホールにゴム製のカバーをはめる弱音器、弦に挟み込むミュート器具、薄いフィルム状の消音ピックなどが紹介されています。しかし、これらは確かに音量を下げるものの、アコギ本来の豊かなサステイン(音の伸び)や倍音の響きを完全に奪ってしまいます。「ポコポコ」とした味気ない音しか出ないため、弾いていて爽快感が得られず、演奏意欲そのものが削がれてしまうという本末転倒な事態に陥りがちです。
ここで圧倒的な優位性を発揮するのがエレキです。エレキの生音は約60dB〜65dB程度であり、これは通常のテレビの音量や日常会話と同等です。さらに、後述するヘッドホン端子付きアンプや、ギターのジャックに直接挿す超小型ヘッドホンアンプを使用すれば、外にはかすかなピッキング音しか漏れない状態で、耳元では武道館のステージさながらの迫力あるディストーションサウンドを体感できます。深夜でも周囲を気にせず没頭できる練習環境を手に入れられる点は、都市部で暮らす現代の日本の住環境において極めて強力なメリットです。