エリゼ宮(フランス共和国大統領府)の重厚な扉の向こうで、ブリジット・マクロン氏が担う役割は儀礼的な伴侶にとどまらない。公式な法的地位こそ持たないものの、彼女には専従のスタッフチームが配備され、日々届く膨大な市民からの手紙に目を通す。教育現場のいじめ問題や若者のメンタルヘルス、障害者支援など、彼女が主導するプロジェクトは大統領の政策アジェンダと絶妙に呼応している。
側近たちが口を揃えるのは、彼女の「直言力」だ。閣僚やアドバイザーが保身のために言葉を濁す場面でも、彼女だけは大統領に対して冷徹な世論の温度感を突きつける。国際政治の荒波に揉まれる政権運営において、夫が最も心を許し、かつ警戒する批評家が彼女なのだ。夜遅くのエリゼ宮で交わされる二人の対話が、時として重大な人事や演説のトーンを決定づけてきた事実は、もはや公然の秘密と言っていい。