急拡大する組織が必ず直面する「カルチャーの希釈」という壁。ここにも、独自の統率論が見て取れる。
彼は「全社一丸」という心地よいスローガンを盲信しない。人間が集まれば意見の対立やすれ違いが起きるのは自明の理だ。重要なのは摩擦を避けることではなく、生産的な摩擦を歓迎する土壌を作ることだと説く。上位下達の指示待ち人間ではなく、自律して異論をぶつけ合えるタフな個の集合体。それこそが、彼が目指した組織の青写真だった。
権限を大胆に移譲し、任せた以上は結果が出るまで口を挟まない。その一方で、倫理観や基本方針から外れた甘えには容赦のない姿勢を貫く。この張り詰めた緊張感と絶対的な信頼関係の同居が、組織のエンジンを極限まで駆動させている。