浮月楼の最大の魅力といえば、敷地内に広がる圧倒的な庭園の美しさにほかならない。明治期、京都の天才作庭家として名を馳せた7代目小川治兵衛(植治)の手によって造営されたこの池泉回遊式庭園は、四季折々の表情を見せる。徳川慶喜公がかつて佇み、歌を詠み、カメラを構えたとされる場所が今も大切に保全されているのだ。
近年、日本の料理界や日本料理業界全体において「空間演出と食の融合」が再評価されているが、浮月楼はその最高峰といえる。池を泳ぐ錦鯉の姿や竹林を揺らす風の音を聞きながらいただく料理は、五感すべてを満たしてくれる。かつての将軍が見つめた風景に思いを馳せながら過ごすひとときは、他では味わえない歴史の深みを感じさせる。