物語の舞台は、海と山に囲まれた架空の地方都市「蝦蟆野(はまの)」。この閉鎖的でどこか不穏な空気が漂う街を舞台に、一見すると無関係に見える複数の登場人物たちの運命が交錯していきます。
単行本および文庫版『いけない』は、以下の全4章(実質3つのエピソード+終章)で構成されています。
- 第1章「弓投げの崖を見てはいけない」:中国人の少年・白(パイ)と、彼が慕う刑事・吉羽、そして交通事故を巡る疑惑。
- 第2章「その話を聞いてはいけない」:自殺の名所と呼ばれる山中で、不気味なカルト宗教団体の勧誘に巻き込まれる男・珂介の恐怖。
- 第3章「絵の謎を解いてはいけない」:母を亡くした小学生・澪と、彼女を取り巻く大人たちの歪んだ思惑、そして廃墟で描かれた不気味な絵。
- 終章「祈りの海を見てはいけない」:全ての事件の背後に存在した決定的な接点と、読者が最後に突きつけられる最後の写真。
本作の最大の特徴は、本文を読んでいる最中には「解決した」「悲しい結末だった」と認識していた事象が、最後のページに印刷された「モノクロ写真」を凝視した瞬間に全く別の惨劇へと変貌する点にあります。文字による叙述トリックと視覚情報のギャップを極限まで利用した構成となっています。