清純派女優としての階段を駆け上がった島田陽子さんは、1970年代中盤から本格的な演技派としての評価を確固たるものにしていきます。その実力を日本中に知らしめた代表作が、1974年に公開された野村芳太郎監督の映画『砂の器』です。
宿命を背負った天才音楽家・和賀英良(演:加藤剛)を献身的に愛し、過酷な運命に巻き込まれていく薄幸のバーホステス・高野リエ役を演じきりました。白黒のコントラストが際立つ劇中で、彼女が見せた涙の美しさと儚い色気は、従来の「清純派」の枠組みを大きく超える凄みを放ち、日本アカデミー賞の前身となる数々の映画賞で高い評価を獲得しました。
さらに1978年のテレビドラマ『白い巨塔』(田宮二郎版)では、主人公・財前五郎と対立する東教授の令嬢・東佐枝子役を好演。医学界の権力闘争が渦巻く重厚な群像劇の中で、凛とした知性と純粋な倫理観を持ち続ける佐枝子の存在は、視聴者にとって唯一の心の救いとなりました。整った目鼻立ちと涼やかな声のトーンは、良家のお嬢様という役柄に完璧な説得力を与えていたのです。