大相撲の世界において、十両以上の「関取」と、その下に位置する「幕下」以下の力士との間には、文字通り天と地ほどの隔絶がある。その格差が最も視覚的に現れるのが廻しだ。関取になれば本場所の土俵で色とりどりの絹製締め込みを締めることが許され、稽古場では清潔な白木綿の廻しを身につける。一方で、幕下以下の力士は本場所でも稽古場でも、一貫して黒い木綿の廻ししか身につけることが許されない。
物質的な違いだけではない。関取には日本相撲協会から月額100万円以上の給与や各種手当、個室、そして自らの身の回りの世話をしてくれる付け人が与えられる。対して幕下以下の力士は「力士養成員」という扱いに過ぎず、月給はゼロ。本場所ごとに支給されるわずかな場所手当のみで生活し、大部屋での雑魚寝を余儀なくされる。新幹線での移動すら関取がグリーン車であるのに対し、幕下以下は普通車の自由席だ。黒い木綿を巻いている限り、彼らは一人前の男として扱われない。