大田南畝の二面性|幕府官僚と狂歌師・蜀山人の知られざる真相

大田南畝の二面性|幕府官僚と狂歌師・蜀山人の知られざる真相

大田南畝の二面性|幕府官僚と狂歌師・蜀山人の知られざる真相の要点や背景を専門的かつ分かりやすくまとめました。最新トレンドを一目で把握できます。

晩年の大田南畝は、文人墨客としての名声がさらに高まり、揮毫を求める人々が列をなしました。彼が残した名言や辞世の句には、人生の酸いも甘いも噛み分けた達観の境地が表れています。

現在、ネット上や一般の解説記事において、大田南畝の辞世の句として以下の歌が頻繁に引用されます。

「今までは 人のことだと 思ひしに 今度は我の 死ぬるなりとは」

※俗に大田南畝の辞世とされる有名な狂歌

しかし、近年の歴史考証や国文学の研究データによると、この歌は古くからの伝承歌や他者の作とも混同されており、南畝唯一の辞世と断定するには慎重な議論が必要です。彼が臨終に際して真に伝えたかったのは、死の恐怖を諧謔(ユーモア)で包み隠し、最後まで自分を客観視し続ける態度でした。

もうひとつ、彼が残した有名な言葉に次の句があります。

「生き甲斐の ある世の中を 死ぬるかな 骨折り損の くたびれ儲け」

一見すると人生の無常を嘆く諦観のように聞こえますが、実態は正反対です。貧しい御家人から身を起こし、天明の狂乱を駆け抜け、寛政の弾圧をかわし、長崎の地で国防の最前線に立ち、江戸幕府の勘定組頭まで勤め上げた。その全力疾走の人生を「ああ、くたびれた。実によく働いた」と笑い飛ばして見せたのです。自己の重荷をユーモアに昇華させるこの姿勢こそ、蜀山人が後世に遺した最大の美学といえます。

阿部 裕樹
Author

阿部 裕樹

マネー知識やキャリア形成に役立つノウハウを、初心者にも分かりやすく解説するのが得意です。