大森靖子のキャリアを語る上で避けて通れないのが、「メンヘラポップ」と呼ばれる新ジャンルの確立だ。従来のJ-POPが描く爽やかな恋愛や前向きなメッセージをあざ笑うかのように、彼女は心の病みや自傷衝動、執着心といった人間の陰部をポップなメロディに昇華させてきた。
初期の傑作インディーズアルバム『魔法が使えないなら死にたい』や、代表作『絶対少女』は、女子中高生や生きづらさを抱える若者の心に深く突き刺さった。言葉にならない歪んだ感情を鮮やかに言語化する手腕は天才的と評される一方で、その露悪的な世界観を「生理的に受け付けない」と拒絶するリスナーも少なくない。過激な表現力は刃であり、魅了される者と傷つく者を同時に生み出している。