三河島を語る上で絶対に外せないのが、新大久保と並ぶ伝統を持つ東京コリアンタウンとしての顔だ。大正期から昭和初期にかけ、この地に根を張った在日コリアンコミュニティが育んだ食文化と人情は、今も路地裏の至る所に深く息づいている。専門店の店頭に並ぶ本格的な手作りキムチやトッポギの味を求めて、遠方から足を運ぶファンも少なくない。
一方で、このエリア特有の濃密な人間関係と昭和の面影が残る街並みは、クリエイターたちの創作意欲も刺激してきた。第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した映画『万引き家族』の世界観にも、東京都荒川区特有の下町風情と重なるグラデーションが色濃く影を落としている。近代化の影で置き去りにされがちだった人間の温もりや生活感が、この街にはたしかに漂っていた。