「朝のゴミ出しの最中に背後から急襲された」「散歩中の犬をかばおうとして重傷を負った」。連日のように流れる緊急報道ニュースのテロップは、犠牲となった人々の悲痛な叫びを伝えている。
かつて放映され大きな反響を呼んだNHKスペシャル「熊出没警戒プロジェクト」をはじめとする検証番組でも、突然遭遇した人間のパニック状態と、クマの圧倒的な筋力・爪の破壊力が克明に描かれた。こうした環境ドキュメンタリーの映像資料が突きつける現実は重い。一瞬の油断が、不可逆の重傷や死へと直結するのだ。
被害事例の多くは、出会い頭の事故である。曲がり角、藪の陰、早朝や夕暮れの視界が悪い時間帯。熊もまた人間に驚き、防衛本能から一撃を加える。その一撃は人間の頭蓋骨や顔面を易々と砕く威力を持つ。過去の経験則が通用しない今、私たちは「いつ自宅の庭先に現れてもおかしくない」という前提に立ち行動を変える必要がある。