川本真琴の通算4枚目のシングルとして世に送り出された『桜』の発売日は1998年4月1日。デビューシングル『愛の才能』(1996年・岡村靖幸プロデュース)の鮮烈なインパクト、大ヒットアニメのオープニングテーマとなった『1/2』(1997年)の成功を経て、名実ともにトップランナーへと駆け上がっていた時期にリリースされました。
当時の制作背景を振り返ると、本作の作曲経緯には彼女自身の並々ならぬクリエイティビティの追求がありました。デビュー当初のプロデューサー主導の体制から徐々に自己の表現領域を広げ、アコースティックギター1本で作られたデモテープの荒々しい熱量を損なうことなく、ストリングスとアグレッシブなバンドサウンドを高次元で融合させる試みが行われたのです。
関係者の回想や当時の音楽誌インタビューによると、彼女はピアノで培った豊かな和声感覚をあえてギターという打楽器的な弦楽器にぶつけることで、従来のフォークやガールポップの定型を打ち破る独自のグルーヴを生み出しました。春の情緒をただ美しく歌い上げるのではなく、思春期の焦燥感や痛みをそのまま音像化させたアプローチは、当時の音楽業界関係者にも大きな衝撃を与えました。